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レジの月額15,400円より、気づかず払っている手数料のほうが高かった

決済代行会社「全東信」の破産をきっかけに、POSレジと決済の仕組みを調べ直しました。スマレジとAirレジの「安い料率」には全部条件が付いていて、単純な分岐点は存在しませんでした。

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うちの店のレジは、東芝テックです。しかも全自動で、注文も会計もお客様に全部やってもらっている。

つまり僕は、この記事で比較するスマレジもAirレジも使っていません。おまけに機器も決済先も本部支給なので、自分で選ぶ余地もない。

それでも調べたのは、7月に1,259億円を残して消えた会社のニュースを見たからです。そして調べていくうちに気づいたのは、レジの月額より、売上から黙って引かれている決済手数料のほうが大きいということでした。

決済代行会社が、1,259億円を残して消えた

2026年7月6日、全東信という会社が破産しました。負債総額は1,259億円。今年最大の倒産です。

聞き慣れない社名かもしれません。でも飲食店にとっては他人事じゃない会社でした。クレジットカードの売上を、カード会社より先に立て替えて店に入金してくれる。要するに入金サイクルを早めてくれる決済代行会社です。ピーク時の加盟店は約20万店ありました。

破産すると、未入金だった売上は「一般破産債権」という扱いになります。税金や未払い賃金が優先的に支払われて、残りがあれば配当。過去の事例では回収率は数パーセント程度です。事実上、戻ってこないと考えたほうがいい。

売上は立っているのに、現金だけが入ってこない。飲食店にとって、たぶん一番きつい形です。

レジと決済は、別物だった

このニュースで、恥ずかしながら初めてちゃんと意識したことがあります。

レジ(POS)と決済代行は、まったく別のレイヤーだということ。

レジは注文を打って会計する道具。決済代行は、そのカード売上を実際にお金に変えて店の口座に振り込む会社。同じ「レジまわり」に見えて、担い手がまるで違います。

だからレジのアプリが元気に動いていても、決済代行が飛べば売上金は入ってきません。逆に言えば、レジをどれにするかより、決済を誰に預けるかのほうが重い

じゃあ、その2つを選ぶときに何を見ればいいのか。気になって調べました。

POSレジには「2つの世界」がある

まず分かったのは、POSレジ市場がきれいに2層に分かれていることです。

第1層:大手チェーン向けの据置型

  • 東芝テック 36%
  • NEC 28%
  • 富士通フロンテック 18%

この3社で8割を占めています。スーパーや大型チェーンが本部一括で導入するタイプで、初期費用は数十万から数百万円の世界。

第2層:個人店・小規模向けのタブレット型

  • Airレジ 約46.9万店舗
  • スマレジ 約12.1万店舗
  • ユビレジ 約3万店舗

僕らがよく名前を目にするのはこっちです。そしてこの層はAirレジの1強+スマレジという構図でした。4倍近い差がある。

「最近スマレジをよく見るな」という感覚は間違っていなかったけど、それは市場全体の話ではなく、第2層で起きている変化でした。

「スマレジは高い」の正体は、月額じゃなかった

正直に言うと、僕は最初「スマレジは高い」で思考が止まっていました。

飲食店向けのフードビジネスプランが月15,400円。対してAirレジは月0円。年間で18万円以上の差です。これは高い。

しかも調べていくと、レジの月額だけでは足りませんでした。カード決済をするにはスマレジの決済端末(PAYGATE)が要って、これが別で月3,300円。合わせて月18,700円が固定費です。

Airレジ側はAirペイの初期費用・月額とも0円で、カードリーダーは無償貸与。こちらの固定費は本当に0円でした。

スマレジ Airレジ(Airペイ)
レジ月額 15,400円 0円
決済端末の月額 3,300円 0円
端末代 39,600円(無料キャンペーンあり) カードリーダー無償貸与
クレカ手数料 1.98%〜 2.48%〜3.24%
入金回数 月2回 月6回または月3回

※料金・手数料率は2026年8月時点で公開されているものです。最新の条件は各公式サイトでご確認ください。

固定費は月18,700円の差。でも手数料率はスマレジのほうが安い。だったらどこかで逆転するはずです。

最初はこう計算しました。

固定費差 18,700円 ÷ 手数料率差 0.5%(2.48% − 1.98%)= 約374万円

月のカード決済額が約374万円を超えればスマレジが安くなる。そう思ったんですが、これが間違いでした。

安い料率には、全部条件がついていた

1.98%も2.48%も、誰でも使える数字ではありません。どちらも小規模事業者向けの優遇料率で、上限があります。

優遇料率 適用上限(年間決済額)
スマレジ 1.98% Visa・Mastercard 合計 2,500万円以内
Airペイ 2.48% Visa 2,000万円 / Mastercard・JCB等 1,000万円

年2,500万円は月に直すと約208万円。年2,000万円なら約167万円です。

つまりさっき出した374万円は、そこに届いた時点で両社とも優遇料率を失う金額でした。存在しない分岐点を計算していたことになります。

条件を踏まえて引き直すと、こうなります。

月のカード決済額 スマレジ Airペイ 安いのは
〜約167万円 1.98% 2.48% Airペイ
約167万〜208万円 1.98% 3.24% スマレジ
約208万円〜 非公開 3.24% 要問い合わせ

小さい店では、0.5%の差で月18,700円は回収できません。167万円 × 0.5% = 8,350円。固定費の半分にも届かない。

逆転が起きるのは、Airペイ側の優遇が切れて3.24%に上がってからです。差が1.26%に開くので、ようやく18,700円を回収できる。ただしその帯は月167万〜208万円の間しかなく、そこを超えるとスマレジ側の優遇も切れて、通常料率は公開されていません。

「月◯万円で逆転する」という単純な話ではなかった。それが調べた結論です。

見える固定費と、見えないコスト

数字以上に効いているのは、たぶんこれです。

月18,700円は「見える固定費」だけど、決済手数料は売上から勝手に引かれていく「見えないコスト」

同じ金額でも、毎月請求書で目にする18,700円のほうが痛く感じます。実際には手数料のほうが大きいのに、そっちは意識に上らない。

月商300万円・カード比率50%の店なら、カード決済額は月150万円。優遇料率の2.48%でも手数料は月37,200円で、固定費のほぼ2倍。優遇が効かず3.24%なら月48,600円、2.6倍です。気づかないまま払っている。

「レジが高いから導入が進まない」とよく言われます。でも本当は、すでに払っているコストが見えていないだけなのかもしれません。

選べない僕が、それでも調べた理由

最初に書いたとおり、うちは本部支給の東芝テックです。僕がスマレジやAirレジに乗り換えることはありません。

しかも調べていて、もうひとつ分かったことがあります。スマレジの1.98%には「FC加盟店でないこと」「新規でクレジットカード決済を導入すること」という条件が付いていました。うちはFCで、カード決済はとっくに入っている。二重に対象外です。

同じ立場の人は、たぶん多い。「1.98%〜」の「〜」は、思っていたより重い記号でした。

それでも、知っておけることはあります。

  • 月のカード決済額はいくらか
  • 手数料率は何%か(優遇料率が適用されているのか)
  • 年間でいくら払っているか
  • 売上はどこを経由して、何日後に入ってくるのか

選べなくても、この4つは自分の店の数字です。特に最後のひとつは、全東信の件があるまで一度も意識したことがありませんでした。レジの機種は覚えていても、その先で誰がお金を預かっているかは知らなかった

入金回数を調べたら、Airペイが月6回または月3回で振込手数料0円、スマレジが月2回でした。手数料率ばかり見ていたけれど、預けた金が何日で戻るかも立派な比較軸です。全東信の件のあとでは、なおさら。

そして、選べる立場の人もいます。これから独立する人、個人店をやっている人、複数店舗を自分の判断で回している人。その人たちにとっては、自分の決済額がどの帯にいるのか、優遇料率の条件を満たすのか、そして預ける相手が自分で調べられる会社かどうかが、そのまま判断材料になります。

その点でスマレジは東証グロース上場(証券コード4431)で、決算が公開されています。2026年4月期は売上133億円・営業利益32億円。「どういう会社なのか自分で調べられる」というのは、今回の件のあとでは地味に大きい。

料率のほうも、月208万円を超える帯の条件は公開されていません。自分の決済額を持って聞くしかない。資料は無料でダウンロードできます。僕は選べない側ですが、選べる人には数字を見てから決めてほしいと思います。

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