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入らなくていい社会保険に、個人事業主の僕が自分から入った理由

飲食店の個人事業所は、従業員が何人いても社会保険は強制適用になりません。義務がない立場のまま任意適用の申請をして、書類で一度完敗しました。加入を決めた損得勘定と、これから同じ道を通る人向けの注意点を書きます。

飲食店の個人事業所は、入らなくていい

会社は社会保険に強制加入。これは知っている人が多いと思います。

でも個人事業所は違います。

社会保険(健康保険+厚生年金)が強制適用になるのは、次のどちらか。

  • 法人(社長ひとりでも強制)
  • 個人事業所で、常時5人以上を使う適用業種

この適用業種から、飲食業は外れています。宿泊業、理美容業なども同じで、非適用業種と呼ばれます。

つまり個人事業所で飲食店をやっている限り、スタッフが何人いようが加入義務はない。うちもそうでした。

義務はない。誰にも怒られない。それでも自分から手を挙げて、任意で加入しました。

きっかけは「年収の壁」の話し合いだった

制度から入った話ではありません。スタッフとの働き方の面談が始まりでした。

  • 103万円を超えると親の税金が上がる
  • 130万円を超えると社会保険の負担が出る

学生バイトの子と話しながら、自分でも説明しきれないことに気づきました。所得税・住民税・社会保険で、それぞれ基準が違う。本人も親も混乱する。

働きたい人にブレーキをかける仕組みにモヤモヤしたまま、じゃあ逆に「うちで社保に入れる」という手はないのか、と考え始めました。

双方の数字が、たまたま噛み合った

きれいごとではなく、これは損得勘定の話です。

働く側。 主婦のスタッフには家庭の事情がありました。本人が社保に入れれば、子どもを自分の社会保険の扶養に入れられる。家庭トータルで見ると、負担のバランスがプラスに振れる。本人にも「入りたい」理由があった。

雇う側。 正直、僕の支払いは確実に増えます。事業主負担が丸ごと乗ってくるので。

それでも決めたのは、社保がコストであると同時に、すでに戦力になっている人に長くいてもらうための投資でもあるからでした。

人が採れない。採っても続かない。求人媒体に金を払い、教える時間を払い、それでも抜けたらシフトの穴は最後に自分が埋める。僕は業務委託店長なので、何時間店に入っても報酬は1円も増えません。穴埋めは丸ごと持ち出しです。

その持ち出しと天秤にかけたとき、事業主負担のほうが安い。そう踏みました。

落とし穴:「この人だけ加入」はできない

検討中の人に、いちばん先に伝えたいのがここです。

社保の加入事業者になると、適用は店全体に及びます。加入条件を満たすスタッフは全員が対象になる。「この人だけ」という選び方はできません。

僕は最初これを知りませんでした。1人との面談から始めた話が、気づけば店全体の話になっていた。

だから検討するなら、最初から条件を満たす人が他にもいないかまで含めて考えたほうがいい。コスト試算も、1人分ではなく全員分で見ないと足をすくわれます。

なお対象になるのは原則、週の所定労働時間がフルタイムの4分の3以上の人。うちの規模だと、扶養の範囲で働く短時間のパートさんの働き方は変わりませんでした。

「書類を出せばいいんでしょ」は甘かった

正直、そのくらいに考えていました。

甘かった。

調べて書類を揃え、日本年金機構に提出。結果は、必要なのに足りない書類が半分、要らない書類が半分。完敗でした。

特に足りなかったのが、僕個人が事業主としてちゃんと事業をやっていると証明する書類。どれか1つあればいいと思っていたら、全部必要だったんです。

求められた支払証明の一例

  • 住民税
  • 国民年金
  • 健康保険
  • 所得税
  • 事業税
  • 公共料金

e-Taxやコード決済で払ったものは、それぞれの管轄から証明書を取り寄せる必要があります。 手元の控えでは足りない。ここは時間がかかるので、早めに動いたほうがいい。

「一回で終わるのは無理」と事前に聞いていたので、ダメージは少なかった。最初から二段構えで諦めていたのが、結果的に正解でした。

「お金払うって言ってるのに」

思ったことはあります。

入らなくてもいい立場で、自分から入ると言っている。保険料も払うと言っている。それなのに、ここまで確認するのかと。

でも裏を返せば、それだけ厳密に運用されているということ。払う側にも、ちゃんと事業をやっている証明を求める。当たり前のことなんですが、やってみて初めて腹に落ちました。

提出のタイミングで保険料が変わる

もう1つ、危うく事故りかけた点。

保険料の基準になる標準報酬月額は、加入する直前の働き方で決まります。

繁忙期で残業が乗った月がそのまま基準になれば、そのあと1年、高い保険料を払い続けることになる。

事前に試算しないまま出していたら、確実に「思ったより高い」となっていました。提出タイミングは、書類を揃えるのと同じくらい大事です。

いずれ義務化されるが、うちは対象外だった

2025年に成立した年金制度改正法で、常時5人以上を使う個人事業所の非適用業種は解消される方向になりました。飲食サービス業も、いずれ強制適用になります。

ただし調べてみると、施行日時点ですでに存在する事業所は当分の間、経過措置で対象外でした。

つまり、うちは黙っていれば当面そのままでいられた側です。

それでも入りました。義務になったから入る、では遅いと思ったからです。人が採れなくなってから制度に助けてもらおうとしても、たいてい間に合わない。

固定費を自分で増やした重さ

きれいに計算が合った話のように書きましたが、怖さはあります。

社保は売上が落ちても減りません。人件費に連動して勝手に付いてくる固定費です。売れない月ほど重くのしかかる。

しかも一度入ると簡単には抜けられない。逃げ道を自分で塞いだとも言えます。

国保組合の保険料を1円でも下げようとしていた僕が、こっちでは自分から固定費を増やしにいっている。矛盾しているようで、たぶん同じ話です。自分の分は削り、人に渡す分は増やす。

60歳で店の最前線から降りるつもりなら、自分がいなくても回る店をつくるしかない。回るかどうかは、そこにいる人が続けてくれるかどうかで決まります。

まずは1年、採用と定着の数字を追ってみます。効いたのか効かなかったのか、ちゃんと出たらまた書きます。

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