70席の飲食店を、スタッフ20人前後で回しています。僕は雇用されていません。業務委託店長という立場の個人事業主で、今年で8年目です。
この8年、いろいろなものを自分で決めて、自分で払ってきました。健康保険も、年金も、確定申告も、レジのことも、回線のことも。
そのたびに調べた内容を1本ずつ記事にしてきたのですが、バラバラになってきたので、ここに全部まとめます。 詳しい話は個別の記事に置いてあるので、気になったところから読んでください。
この立場の何が特殊なのか
最初に、位置関係だけはっきりさせておきます。
| 会社員の店長 | 業務委託店長(僕) | オーナー | |
|---|---|---|---|
| 雇用契約 | あり | なし | なし |
| 社会保険・年金 | 会社が半分持つ | 全部自分 | 全部自分 |
| 確定申告 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 設備・仕入れの決定権 | なし | ほぼなし | あり |
| 店の数字の責任 | 会社と分担 | 自分 | 自分 |
見てのとおり、義務はオーナー側で、権限は会社員側です。ここが業務委託店長のいちばん面白いところで、いちばん厄介なところでもあります。
働き方そのものの話は、この2本に書きました。
- 業務委託店長という働き方のリアルと本音 — そもそもどういう契約なのか、一日の流れ
- 業務委託店長のリアルなメリット・デメリットと、僕が選び続ける理由 — 収入の仕組み、住民税と健康保険料の落とし穴
1. 健康保険:安くする道を探して、断られた
個人事業主になって最初にきついのが、国民健康保険料です。会社が半分持ってくれる仕組みが、まるごと無くなります。
飲食業には国保組合という別ルートがあって、こちらは所得に関係なく保険料が定額。試算したら格段に安かった。意気揚々と問い合わせて、断られました。
決め手になったのは、営業許可の名義でした。
業務委託店長という立場は、こういうところでときどき制度の隙間に落ちます。「個人事業主だから使えるはず」と思った制度が、店の名義が自分ではないという一点で使えない。 これは事前にはまず気づけませんでした。
ただ、この件はまだ終わっていません。 断られたのは問い合わせの段階での話なので、今度は事務所に直接行って、もう一度相談してきます。結果が変わったら、この記事も元の記事も書き直します。
2. 老後:退職金がないので、自分で作るしかない
雇用されていないので、当然ながら退職金はありません。厚生年金もない。放っておくと、辞めたときに何も残らない立場です。
そこで入ったのが小規模企業共済とiDeCoでした。どちらも掛金が全額所得控除になるので、節税をしながら将来の原資を積める仕組みです。
- 小規模企業共済のしくみと、僕が入っている理由 — 掛金全額控除の効果と、元本割れなどのデメリット
- iDeCoと小規模企業共済、個人事業主はどちらを選ぶべきか — 節税額はほぼ同じ。違うのは受け取り方
僕は両方やっています。ただし併用には受け取り時の落とし穴があります。 そこは2本目に書きました。
3. 確定申告:本部に勧められたまま、8年
会計ソフトは、業務委託店長になったときに本部の経理の方が勧めてくれたものを、そのまま8年使っています。自分で比較検討した記憶がありません。
「ちょっと癖があるんだよね」と言われたのをきっかけに、初めて他社と並べてみました。結論として乗り換えはしていないのですが、選び方の軸が変わりました。
ふるさと納税も、個人事業主だと会社員とルールが違います。ワンストップ特例が使えないので、確定申告とセットで考える必要があります。
4. 人:20人を回すということ
スタッフは20人前後。アルバイト中心です。8年やっていて、いちばん時間を取られるのはやっぱり人でした。
- 出勤30分前に「休みます」。バイトの当日欠勤に店長がやっている10分間 — 責めずに返す。そして本当に怖いのは「できる子への集中」のほう
- タイムカードは紙のままでいい。人が増えたら、パソコンに移すのが一番ラクでした — 他人を1人でも雇えば、労働時間の記録は義務になります
当日欠勤の記事に書いたことは、8年ぶんの試行錯誤の結果です。若い頃は普通に怒っていました。今のやり方に落ち着いたのは、怒ると次から連絡が来なくなると分かったからです。
5. 機械と回線:選べない立場で起きたこと
ここが業務委託店長のいちばんしんどいところかもしれません。設備は本部の管轄なので、僕には決定権がありません。 それでも、止まったときに現場で対応するのは僕です。
- 注文が飛ばない。画面には「注文済み」。犯人はタブレットじゃなくて回線だった — 光が開通するまで8か月、毎日コンセントを抜いていた話
- レジの月額15,400円より、気づかず払っている手数料のほうが高かった — レジは選べない立場で、それでも調べた理由
回線の記事に書いた8か月は、正直、この8年でいちばん消耗した期間でした。店に配線図が存在しないということが、そもそもあり得るのだと知ったのもこのときです。
8年目で分かった「本当のコスト」
まとめると、業務委託店長という働き方の本当のコストは、お金ではありませんでした。
調べる時間と、決める責任です。
会社員なら総務が決めてくれることを、全部自分で調べて決めます。健康保険をどれにするか。老後の原資をどこに積むか。会計ソフトを何にするか。そのどれにも正解が書いていなくて、間違えても誰も教えてくれない。
逆に言えば、それを面白いと思えるなら向いています。僕は8年やって、まだ面白いと思っています。
ただし、これから同じ立場になる人には言っておきたいことがあります。契約の中身より先に、「自分で払うことになるもの」を全部数え上げてください。 収入の話は分かりやすいので誰でも確認するのですが、抜けるのはいつも支出側です。
これから書くこと
まだ書けていないことがあります。
- 社会保険の任意適用に自分から申請した話(義務がない立場で、あえて入りました)
- 国保組合に、窓口で直接相談し直した結果
- 副業でやっていた越境ECの話 — このブログには「副業とAI」というカテゴリがあるのに、まだ1本も書けていません
- 8年ぶんの現場対応を、他の人が使える形にまとめること
このページは、記事が増えるたびに更新していきます。
同じ立場の人、これからなるかもしれない人が読んで、少しでも判断材料になれば嬉しいです。質問があればお問い合わせからどうぞ。